9月 | 2017 | 春は花

安田念珠店 オフィシャルサイト

春は花

解釈

近年は小学校で英語を習うそうですが、私が英語を習ったのは中学校からでした。「英語→日本語」と「日本語→英語」の訳文が作れるようになることが学習の目標だったと思うのですが、英語を習い始めた当初から「解釈」という言葉に何か不思議な感覚を抱いていました。
夏目漱石の有名な小説に『吾輩は猫である』があります。この題名を英語に訳すと「I am a cat.」です。ですが、「I am a cat.」を日本語に訳す場合、例えばテストの解答用紙に「吾輩は猫である。」と書く人は少ないでしょう。私は中学校1年生の時にこの疑問を抱いて、勝手に「“吾輩は猫である”問題」として中学校で語っていました。この問題は、日本語と英語の構造の違いが要因ですが、私は「(英文)解釈」とは単なる訳文を作るだけでなく、読み手に分かり易い表現を使うべきなのだと学びました。
日本では、英文だけでなく古くから漢文が読まれてきました。漢文も英語と同じくS(主語)→V(動詞)を基本形にした文法をとります。経典に代表される仏教に関する文章はその多くが漢文で書かれており、英文と同じく解釈が必要になります。ですから、その語を見て即座に意味を理解できる人はそれほど多くないと思います。
「解釈」というのは地道な作業で、何か分かり易く解説してくれる書籍はないものかと思っていました。そこに最近、何とも分かり易い書籍が出版されました。『茶席からひろがる漢詩の世界』という本です。この書籍は単なる日本語の訳文だけでなく、1つ1つの単語やその背景知識を丹念に解説してくれています。その解説方法も、先生と生徒役の女の子がいろいろとやり取りをする形で展開されています。「漢文解釈」を分かるように示してくれる良書だと感じました。
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弊社には、上の画像の香語(法要の要となる精神を漢文調にまとめたもの)を掲げてあります。

【原文】
甘露雨潨蒼翆中
念珠結絆白玲瓏
年年等接温和手
綿密家風老舗隆
 安田念珠店主人いわく
 手のひらから伝わる素敵なぬくもり
 平成廿四年梅雨 花園太聳たいしょう 山人

【絶句の部分の現代語訳】
恵みの雨は樹木が青々と茂っている中に集まり、
念珠は美しく照り輝く絆を結んでくれる。
それは、長い年月、温かな手にいつも接しているとそうなるのだ。
そして、綿密な家風が老舗を盛んにさせる。

揮毫して下さったのは、京都・花園妙心寺塔頭・霊雲院住職の曇華室どんげしつ 則竹秀南老師様です。弊社はこの偈にある通り、お念珠に対して一生懸命、そして緻密に向き合って参り、今後も向き合っていく所存です
次回以降は、宗派毎の念珠の形について、私なりの「解釈」を提示していきたいと考えています。

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茶席からひろがる漢詩の世界

著者:諸田龍美 
出版社:淡交社
発売日: 2017/09/13
メディア: 単行本(ソフトカバー)
参考URL:茶席からひろがる漢詩の世界
(淡交社)

 

念珠の形(総論・その2)

「果報は寝て待て」ということわざをご存知でしょうか?このことわざは「幸運は人の力ではどうすることもできないので、チャンスが巡ってくるまで待っていればよい。」という意味です。ただ「寝て待て」とは言いながらも、もちろん何もせずに寝ていてはいけないのでしょう。努力をすることが大事なのだろうと思います。
この「果報」という言葉、「功徳」や「ご利益りやく」などと言い換えても良いかもしれません。そうするとこのことわざは「ご利益りやくは時機が来れば現れる。」と解釈できます。
さて、7月に達磨大師と梁の武帝との問答をご紹介しました。そこでは、武帝が「私はこれまで寺を建て、経を写し、僧尼を供養してきたが、どんな功徳があるか?」と尋ねると、達磨大師は「無功徳(何の功徳もありません)」と答えた、と記しました。
武帝は「こんなに良いことをしたのだから、私にはたくさんご利益りやくがあるはずだ!」と思っていたのでしょう。何かを求める人には何のご利益りやくもないのです。


前回、お念珠にはお守りとしての役割がある、と申し上げました。
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上の画像のお念珠はどちらも星月菩提樹せいげつぼだいじゅという材を用いたお念珠です。
左側の白っぽいお念珠が新しいもの、右側の茶色掛かったお念珠が長年使用したものです。もちろん少し加工してはおりますが、年を経て使い続けるとこのように木の材は変化していきます。こうした色の変化は決して”求めて”出来上がるものではありません。人の手のぬくもりに木が反応して「つやが出る」のです。そのお念珠が使われる頻度のよって、同じ年数所有されていても「つや」に差が出ます。
「お念珠はお守りである」と私が考えるのは、お念珠にはお持ちになる各々の方への「ご利益りやく」が投影されるものだと考えるからです。決して求めて手に入れられるものではありませんが、若くても年を重ねていても、男性でも女性でも、そんなことは関係なく、いつも皆様の傍らにあって守って下さり、いつの間にか「ご利益りやく」が備わって来るものなのです。
お念珠にはこうした変化を仏教的に「ご利益りやく」と捉えることも出来ますし、単純に色の変化を楽しむことができるという2つの側面があります。皆さまがお念珠を傍らにお持ちになって「ご利益りやく」を受けられることを私は切に願っております。

念珠の形(総論・その1)

これまでいろいろとお話をして参りましたが、今回からは「念珠(数珠)」の形についてお話を進めていこうと思います。
初回の今日は、総論として「念珠」についてのお話です。
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上の図は「数珠挍量きょうりょう功徳経」と呼ばれるものです。一般に「念珠功徳経」と呼ばれるお経を基にした図です。「念珠功徳経」は念珠を持って念仏や仏様のお名前を唱えることで功徳があることを説いたお経です。念仏を重んじる浄土真宗で特に重用されるお経です。その為、この図も浄土真宗の形のお念珠が描かれています。(このお経の詳しい解説は国立国会図書館デジタルコレクションにあります『数珠功徳経和解』(貝葉書院、1896年)をご覧ください。)
この図を見ると、念珠の珠には全て仏様が宿っておられることが分かります。
図の上下にある一番大きな2つの珠は親玉おやだまと呼ばれますが、ここには釈迦牟尼仏(お釈迦様)と地蔵菩薩(お地蔵様)が宿っておられます。そして、念珠本体の基点となる4つの珠を四天玉してんだまと呼びますが、ここには不動明王と愛染明王あいぜんみょおう善財童子ぜんざいどうじ善蜜童子ぜんみつどうじが宿っておられます。
この図を簡単に解釈すると、図の上がお釈迦様のお住まいになる極楽、そして図の下が地獄です。ですから、この図の地蔵菩薩の近くには「地獄」と書かれているのが分かります。
お地蔵様は「釈尊が入滅されてから、弥勒菩薩が下生して仏になるまでの間、無仏の世界に住して六道の衆生しゅじょうを教化・救済する菩薩」『広辞苑〔第6版〕』(岩波書店、2008年)ですから、地獄から魂を救ってくださるのです。
お念珠には宗派によって様々な形がありますが、基本的にはどの宗派であっても主玉にはお釈迦様が宿っておられます。皆さまがお使いのお念珠も、普段から身に付けて頂ければ、お釈迦様が皆様一人一人をお守り下さるのです。お念珠は「お守り」としての役目があると言えます。
次回は、「功徳」という面に焦点を当てて、総論の続きをお話ししたいと思います。

橿原神宮参拝

8月が終わりました。長かった残暑も終わりに近づいたようです。


さて、私は先日、奈良の橿原神宮を参拝しました。京都からですと近鉄に乗って約1時間ほどで到着します。
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橿原神宮は神武天皇を御祭神としてお祀りしている神社です。神武天皇は男性ですので、神殿の屋根が下の写真のようになっています。
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神武天皇とは初代の天皇です。神話である『古事記』〔中巻〕に登場します。
話の要点としては次の通りです。神武天皇は現在の宮崎県高千穂町から瀬戸内海を通って一度大阪へと到着されました。大阪で戦いに敗れ、和歌山沖を沿って熊野に到着、そこから西に向けて再度大阪方面を目指し、現在の橿原神宮の鎮座する場所に都を造られた、というお話しです。
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ここで、「大阪で一旦敗退、熊野から西へ向かって進撃」という部分、実はこのお話の中でかなり大事な部分です。というのも、九州から大阪へという「西→東」の方角は「日の昇る東に向かって」行く方角です。神武天皇は天照大御神あまてらすおおみかみ (太陽の神様)の子孫なので、太陽を背にして戦う、つまり後光が差すように敵と戦うことが大事なのです。このため、神武天皇は一旦熊野へ回り、「東→西」の方角へ進撃をしたのです。
この神話を踏まえて、いろいろな神社を巡ってみると、多くの神社、特に「神宮」と付く神社はそのほとんどが東向きか南向き(太陽の方角)であることが分かります。
「日本」という国の名前も、諸説ありますが、聖徳太子が隋(当時の中国の王朝)の煬帝ようだい への手紙で「日出処の天子、書を没する処の天子に致す。」と書いたことが起源と言われています。昔の人々にとって太陽というのがとても大切なものであったのだということがこうした諸事情から推察できます。
方角に注目して神社やお寺を参拝してみると、また別の発見があるかもしれません。今日は神社と方角についてのお話でした。

※このブログは、多くの方々に念珠、仏教、京都に関心を持って頂くことを目的として、週に1回程度の頻度で更新して参ります。

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