念珠の形(時宗) | 春は花

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念珠の形(時宗)

立春を過ぎたのに、とても寒い日が続きます。皆様は体調を崩されたりはしておられませんでしょうか?
弊社が店を構えるのは「“寺町”六角」と呼ばれます。「碁盤の目」として知られる、人工的に整備された京都特有の呼び方で、南北の通りの名前と東西の通りの名前を交差して位置を指し示します。つまり、「寺町通(南北の通り)」と「六角通(東西の通り)」の交差した位置にありますよ、ということを「寺町六角」と言えば通じるのです。京都の「洛中」と呼ばれる地域は、どんな細い道であっても通りに名前が付いています。「○○X丁目」という地名で呼称される地域は明治以降の都市計画で整備された場所で、こうした地名の呼び方でも都市整備の時期が分かるようで面白く感じます。
さて、この「寺町通」というのは、豊臣秀吉の京都整備に伴って成立した通りです。安土桃山時代には、この地域は「洛中」の東の端であり、また鴨川の河畔で地質としても良質の土地とは言えなかった場所でした。そこに豊臣秀吉は京都各地の大きな勢力を持った寺院を集めていきました。本能寺(法華宗)、誓願寺(浄土宗)といった大寺院がこの「寺町通」に移されました。
寺町通と、八坂神社の参道である四条通の交差するあたりに、かつては「四条道場」と呼ばれた金蓮寺という時宗の寺院がありました。現在はその塔頭の1つの「染殿院」が残されているだけですが、かつては巨大な寺域を誇る京都の念仏道場の中心でした。染殿院は、付近を歩いてみると商店街の中に奥まって佇んでおり、見落としてしまいそうな寺院ですが、とても歴史のある時宗の寺院です。
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時宗という宗派は、一遍上人によって開かれた宗派です。ひたすらに念仏を唱えること、そして「賦算」と呼ばれる念仏札をいろいろなところに貼ることが極楽往生のために必要なことと説かれました。一遍上人が1284年から約2年間京都での活動の拠点とされた場所が、この金蓮寺の起源です。(金蓮寺は現在、京都の北西部、鷹峯にあります。)
時宗と言うと「踊り念仏」が有名です。太鼓や鐘の音に合わせて「南無阿弥陀仏」と唱える光景は、一遍上人のお生まれになった伊予の阿波踊りを想起させます。踊り念仏を見ていると、「難しいことを云々言わぬとも、兎に角楽しく「南無阿弥陀仏」と唱えましょう!」と一遍上人が仰っているように感じます。
念仏を大事になさる時宗では多くの方が浄土宗と同じく日課念珠をお持ちになります。(日課念珠に関してはこちらをご覧ください。)念仏を多く唱えることに執心なさる一遍上人の御教えを体現しているように思います。時宗が京都でも、そして全国で広く広まったのは、何より一遍上人のお話が分かり易かったのが要因だと思います。仏教詩人の坂村真民先生が一遍上人を尊敬されて讃歌を出されているのも、そのためだと思います。
京都にはいろいろな宗派の寺院がありますが、なるほどこんなところに御教えが息づいているのか、と感じ入った一時でした。

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一遍上人語録 捨て果てて

著者:坂村真民 
出版社:大蔵出版
発売日: 1994/10/01
メディア: 単行本(ハードカバー)

 

安田念珠店

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