仏教を身近に | 春は花

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仏教を身近に

梅の花がちらほらと咲く季節になってきました。底冷えする寒さが少しばかり落ち着いたようにも感じます。


今週は色々とイベントがある週でした。2月14日はバレンタインデー、2月15日は涅槃会(お釈迦様が亡くなった日)、そして本日2月16日は日蓮上人の誕生日です。その中でも今日は涅槃会のお話です。
近年注目される絵師として伊藤若冲という人が居ます。彼は1716年に生まれ、1800年に84歳でこの世を去りました。現代の私たちは学校教育で西洋画を学びますので、伊藤若冲の描く色彩豊かな絵を違和感なく受け入れることができますが、伊藤若冲の生きていた時代に若冲の絵は革新的でした。というのも、墨の濃淡の使い分けや細部までの細かな描写はそれまでの日本画の中心であった水墨画や狩野派絵画からは発展的なものだったからです。そしてもう1つ、若冲の絵の特徴は目の前の物を写実することに加えて「想像と創造」を絵に取り込んだことです。
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上の絵は若冲が描いた「果蔬かそ涅槃図」、通称「野菜涅槃図」と呼ばれる絵です。(上の画像は絵葉書として販売されているものの写真を載せています。)もともとの所蔵は誓願寺でしたが、現在は京都国立博物館に所蔵されています。昨日の涅槃会の際、この「果蔬涅槃図」の複製画が誓願寺の本堂に掲げられていました。(誓願寺に里帰りした旨が書かれた新聞記事はこちら。)
涅槃図と言えば、お釈迦様が横になっている周りを弟子たちが見守っている画が一般的ですが、若冲の「果蔬涅槃図」ではお釈迦様が大根に、弟子たちが様々な野菜や果物になっています。これが若冲特有の「想像と創造」なのです。
若冲は錦市場の青物問屋の生まれなので、こうした野菜や果物の涅槃図を描いたのだと予想されます。(若冲に関する錦市場の解説はこちら。)この「果蔬涅槃図」には多くの美術史研究者が様々な解釈を加えてきました。例えば、大根と仏教思想が深いかかわりを持つなどの解釈です。様々な解釈はどれも首肯できるものですが、何よりこの絵を見た人それぞれがどう思うのか、が大事だと私は考えています。
恐らく、若冲がこの絵を描いた当時は「お釈迦様への冒涜だ」という否定的な意見もあったことでしょう。ただ、現代以上に信仰心が強く、それでいて仏教の教義を難しいと感じる信徒が多かった時代、身近な野菜や果物でお釈迦様の最期の光景を描き出した若冲は、多くの”普通”の人々に仏教を身近に感じてほしかったのだと、私は予想します。この絵は、子供が観ても「あの野菜は何ていう野菜だろう」という新たな発見を得ると同時に、お釈迦様への思慕の念を抱くことも出来ます。私は若冲の「想像と創造」は老若男女問わず多くの人に仏教を身近に感じてもらうための方途だったと考えています。
若冲の絵は、綺麗や美しいといっただけでなく、仏教への関心を高めるのに役立つものだと、昨日の涅槃会を通じて感じました。

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