「十代目の部屋」コラム6 ‐ 天和3年(1683年)創業の安田念珠店

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第6回 南無観世音菩薩
全国各地どこへ行っても「・・・観音」と呼ばれるお寺があります。観世音菩薩(通称、観音様)が、これほどまでにも、我々一般庶民に親しまれた理由とは何なのでしょうか。

観世音菩薩は、大乗仏教のいくつかの経典に出てきます。
その代表的なものは「法華経観世音菩薩普門品(ふもんぼん)第二十五」
(通称、観音経)です。

『若し三千大千国土の、中に満てる怨賊(おんぞく)あらんに、一(ひと)りの商主有りて、諸(もろもろ)の商人を将(ひき)いて重宝を齎持(さいじ)して、険路(けんろ)を経過(きょうか)せんに、其の中に一人、この唱言(しょうごん)を作(な)さん。諸の善男子恐怖を得ること勿(なか)れ。汝等應當(まさ)に一心に観世音菩薩の名号を称すべし。この菩薩は、能く無畏(むい)を以って衆生に施したまう。汝等若し名(みな)を称せば、この怨賊に於いて、當(まさ)に解脱(げだつ)を得べしと。衆(もろもろ)の商人、聞きて倶(とも)に声を発(あげ)て、南無観世音菩薩と言わん。其の名を称するが故に、即ち解脱することを得ん。』

(「訓読妙法蓮華経」 法華経読誦普及会編、芝金声堂刊、686~687頁)

その内容は、まず、人間に降りかかる様々な苦難(七難)を「南無観世音菩薩」と称えることによって免れると説きます。同様に、心の迷い(三毒)からも解き放たれ、子宝にも恵まれる、と説きます。最後に、観世音菩薩は様々に姿を変えて(三十三身)この世に現れ、人々を救うと言います。これは阿弥陀信仰に通じるものですが、高邁な理屈なしに信仰することの大切さというものを、この観音経は、教えてくれているようです。

より分かりやすく解釈してみると、次のようになります ; 観世音菩薩は、様々な姿をして私たちのそばに存在し、その名を称えるだけで、様々な苦難を振り払ってくださる。例えば今、目の前を走り去る子供や、商談を進める相手方も、あなたを救おうと存在する、姿を変えた観世音菩薩なのだ、と。

お経は、その意味を理解して読んで見ると、実に深い意味が込められていることに気付きます。観音信仰が、これだけ各地で盛んなのは、お経を唱え、その意味を理解する人に、我々が慈悲深い世の中に生きていることを悟らせてくれるからなのでしょう。我々の文化としての仏教を、現代に生かしたいものです。

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