時事 | 春は花

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「こころ」を豊かに

5月になりました。暑い日が来たかと思えば、涼しい風を感じるような日も来て、春と夏を行き来する日々が続いています。


先日、NHKの「ブラタモリ」という番組を観ていましたところ、銀閣近辺を散歩されていました。この番組の特徴は地形や地層好きのタモリさんが解説をする専門家よりも先に答えを言ってしまうところです。地層好きの私も興味深く拝見していました。
銀閣の中で、足利義政公が生活空間とされていた「同仁斎」で、付書院の前の障子を開けるとそこが「自然の掛軸」のように見えるという解説がありました。自然を部屋の装いの一部として取り入れるという発想が非常によくわかるお話でした。
【建仁寺の付書院】
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【建仁寺の格子窓】
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これを「美しい」と感じるか否かは、各自の心次第です。それが良いとか悪いとかいう問題ではありません。
以前お話を致しました「『こころ』と『おこない』の往復」という考えを踏まえると、いろいろな物や景色を目にすることで、その鑑賞者の「こころ」が豊かになって行くのだと私は考えています。
連休中に各地に赴かれる方も多いと思います。自然を取り入れた日本の美しさを探してみるのも楽しみの1つかもしれません。そして皆様の「こころ」を豊かにして頂ければと思います。有意義な日々となることを願っております。

”外”に伝える

先日、アメリカからやって来た友人と話していて、日本の文化などを説明するのに苦労しました。「佗とは何か?」などと聞かれて、『山上宗二記』や武野紹鷗の『佗の文』のお話をしましたが、よくわかってはもらえませんでした。私の語学的な問題もあったでしょうが、日本語であっても十分に説明できるのか分かりません。
京都には外国人観光客の方が多くお越しになります。日本にお越しになる方は、それだけで日本に興味を持っておられることが分かります。「日本らしさを求めて京都を散策されているのだろうなぁ。」と傍から眺めて感じております。
そんな中、最近では外国人向けの茶道体験の教室が多く存在しているようです。私も1度だけ顔を出したことがありますが、日本人よりも外国の方々の方が相当「日本らしさ」を体現しておられるように感じました。
こうした需要の高まりからか、外国人向けの茶道英会話文集が出版されました。見開きの右側には日本語、左側には英語といった体裁になっています。会話文なので、読み易く、茶室へ実際に行ったような感覚になる本でした。
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日本に関しての注目が高まっている中で、私たち日本人が「日本」について十分に理解し発信できる能力を身に付けていくことが重要なことなのだと感じた1週間でした。

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外国人に茶道を伝える英会話例文集

著者:高橋絹子・新崎隆子 
出版社:淡交社
発売日: 2018/03/10
メディア: 単行本(ソフトカバー)
参考URL:外国人に茶道を伝える英会話例文集
(淡交社)

 

大丈夫 心配するな なんとかなる

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ここ数回は宗派による念珠の違いをみてきました。続きは次回以降にして、今回は私の感じたことをお話ししようと思います。


先日、神奈川県座間市のアパートから9人もの遺体が発見される事件がありました。亡くなった方々は自殺願望があり、犯人は被害者の自殺を手伝う意図を持って近付き、犯行に及んだとのことです。
この事件は、私にとって非常に衝撃的でした。本気で「死ぬこと」を希望する人がこれほどまでに多く、にもかかわらず自力で死のうとしなかった。もしかすると、被害者の方々は同じ気持ちや同じ経験をした人を捜し求め、そういった人と苦しみを共有したかったのではないか?――私はそう考えるのです。
最近はインターネットの普及に従って、TwitterやFacebookなど様々なSNSが広く利用されるようになりました。これは人々の「つながっていたい」という欲求を満たすツールとして爆発的に広がりました。電車に乗って携帯電話を操作している人が大勢いるのは、”誰か”と”いつでも”「つながっていたい」という気持ちを大勢の人が持っていることの証左です。
ただ、人との「つながり」がどうも表面的になってしまったようにも感じます。本当に困った時に相談したり助けてくれる家族や友人、近所の人が少なくなったようにも思います。
私の好きな言葉に「大丈夫 心配するな なんとかなる」という言葉があります。「一休さん」で有名な一休宗純禅師が最期の時に、その弟子たちへ「本当に困った時に開けなさい」と言って遺した箱の中にあった言葉だと伝えられています。弟子たちは寺が窮地に追い込まれ、手を尽くした後にこの言葉を見て、笑ってしまったと伝わっています。
(右の画像の掛物は京都・東山建仁寺管長・小堀泰巖老大師様が揮毫なさったものです。)
生きるというのは面倒なことや大変なことの連続ですが、生きていれば楽しみや喜びを感じることも出来ます。決して悲観的にはならず、楽天的に生きる事が大切なのだと感じます。
今回の事件の報道に接して、窮地に陥った時に相談に乗ってくれたり、助けてくれる方を1人だけでも良いので持つ必要性を痛感しました。そして、血縁関係がなくともお世話になった先生やご近所の方々など、自らと関わりを持った人々を定期的に気遣うことが大事であると、今回の事件を機に一層強く感じました。
今回は、私の感じたことをお話ししました。

夏来るらし

6月になりました。毎日暑い日が続きます。もう夏ですね。
こんなに暑いと体がだるい気がしますが、洗濯物にとっては良い環境です。本当によく乾きます!
昨日、私は電車に乗っていて、民家に干されている洗濯物を目にしました。こういう光景を見ると、今も昔も変わらないなぁ、と思います。
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『万葉集』にこんな歌があります。

春過ぎて 夏きた るらし 白栲しろたへ の 衣 したり あま 香具山かぐやま (持統天皇)〔巻一・二八〕

訳文としては、
「春が過ぎて、夏がやって来たようです。純白の衣を干してありますよ。天の香具山に。」
といったところでしょうか。

百人一首の2番歌の持統天皇の歌は
「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山」
で、こちらの方が有名です。
実はこの二首は元は同じ歌でした。持統天皇は万葉仮名で
「春過而夏来良之白妙能衣乾有天之香来山」
と書かれ、それが収録される歌集によって少しずつ違っているそうです。

この歌は夏が到来したことを喜んでいるように読めます。勿論そうなのですが、私は「天の香具山」という文言から、「春から夏」だけでなく、季節が移り変わることを感じ、神に感謝している歌のように解釈しております。
季節の変化は日常のふとした光景から気付けるのだと、列車の車窓から実感しました。

アメリカ新大統領と「祈り」

本日、アメリカ合衆国では新たな大統領が誕生しました。新大統領の行動や政策は世界中に影響があり、様々な期待や懸念を持って見守られています。
アメリカで起きた「トランプ現象」を見て、「別の国のことだ。」と思ってしまうのではなく、少し立ち止まって考えてみたいと思います。
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日本に住んでいる私達は、世界の中では大変恵まれています。水道の水を飲めますし、日が沈んでから街を歩いても命の危険はありません。(当然のことのようですが、日本以外ではあり得ないことです。)コンビニエンス・ストアに行けば食べ物、飲み物が揃います。何て便利な環境なのでしょうか!!
しかし、私達が平穏に過ごす今この瞬間にも世界の中に飢えた人が居るのは事実です。だからといって、私達にも普段の生活がありますから、苦しむその人達の元へ駆け付けて助けてあげることは現実的にできません。では、どうすれば良いのでしょうか?
トマス・ポッゲという思想家が居ます。彼は『なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか――世界的貧困と人権〔原著題:World Poverty and Human Rights: Cosmopolitan Responsibilities and Reforms〕』という本を書いています。この本では世界の貧困を解決するため、現状分析と解決策の提案が為されています。この本の主張の1つには、先進国の人々が現在のグローバルな秩序を支持することで、遠く貧しい人々への人権侵害をしている、というものがあります。
なかなか難しいです。私たちは、知らず知らずのうちに人権侵害をしている、と言われているのです。そんなつもりはないのに。。。
「自分自身の生活が第一」であることは現実的には致し方ないのです。しかし、利己的になり過ぎず、思いやりの気持ちを持つこと。これが、たくさんの人の集まりである社会を円滑に進める秘訣なのではないでしょうか?
自分だけのこと、自分の国だけのこと、これに固執し過ぎると良い結果はでないのではないか、と私は考えます。
傳教大師・最澄様がおっしゃった「忘己利他慈悲之極」を胸に抱き、手を合わせる一時ひとときを持つ余裕があれば良いのではないか!?
世界の流れが劇的に変わる今、「祈り」の大切さを私なりに考えてみました。

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なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか――世界的貧困と人権

著者:トマス・ポッゲ 
監訳者:立石真也
出版社:生活書院
発売日: 2010/03/25
メディア: 単行本(ソフトカバー)
参考URL:http://www.seikatsushoin.com/bk/052%20pogge.html
(生活書院)

※このブログは、多くの方々に念珠、仏教、京都に関心を持って頂くことを目的として、週に1回程度の頻度で更新して参ります。

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