「こころ」と「おこない」の往復 | 春は花

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「こころ」と「おこない」の往復

お店などに行った際、店内でお花が活けてあることがあります。野に咲く花とは違い、季節や花瓶、そしてお店の雰囲気などに併せてお花が活けられています。そういうお花を見た時、何だか落ち着く気がします。
私はお花を活ける機会を持った時、ただお花を花瓶に差しただけで上手くできたように思えないことがよくあります。お花を活けるということの難しさを痛感します。
日本ではお花を活けることが「華道」という藝術体系として確立されています。最近では野村萬斎さんの主演で映画化された『花戦さ』で華道を身近に感じられた方もいらっしゃるかもしれません。日本において「道」が付くものは華道の他に剣道、柔道、茶道、書道など様々あります。この「道」が付くものをどう考え、どう接すれば良いのか。これはとても大きな問題です。
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能楽を大成した世阿弥は『風姿花伝』という書物を遺しています。その中で次のようなことを語っています。すなわち、「芸」を通して、心を深め高めていき、また、深められ高められた「こころ」で以って「芸」を行っていくのです。この「芸」から「こころ」へを「向去(こうこ)」と、「心」から「芸」へを「却来(きゃらい)」と言っています。
つまり、お花を活けるという行為を通じて自らの心を深め、その高めた「こころ」で花を観賞する。そしてまた更に高めた「こころ」を以ってお花を活ける、という繰り返しを行うことで自分自身を高めていく、ということです。
こうした考えを知ると、活けられたお花は活けた人の「こころ」が現れたものと捉えることができます。そして、ふと目にしたお花を美しいと感じることでその「こころ」が高められていき、自らの活けるお花をより良いものとしていくのです。
お花を活ける、手を合わせる、といった何気ないことも「自分でおこなうこと」と「他の人がしている行為を見ること」の往復で徐々に高められていくのだと私は考えています。「こころ」と「おこない」の往復を通じて自らを高めていくことは難しいですが、大切なことだと感じます。先週ご紹介した書や今回のお花など、その作者の人柄を思いながら鑑賞していくことは重要なのだと感じました。

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