数珠の安田念珠店オフィシャルサイト TOP > 十代目社長のコラム > 第5回 京都の街と念珠
そしてそこへ、市内に散らばっていた寺院を集め寺院街を造りました。それが京都の街を現在も南北に貫く寺町通で、例えば寺町通御池の本能寺は四条油小路付近から移って来たのです。
私共の店の前(新京極通六角)にある浄土宗西山深草派の本山誓願寺も西陣から移って来ました。この誓願寺は江戸時代の初期非常に賑わいました。古い記録によりますと、現在六角通と呼ばれている私共の店の横の通りも、当時は誓願寺通と呼ばれていました。初代藤屋宗次郎はこの様な誓願寺の門前の賑わいの中で念珠店を創業しました。ちなみに、現在の新京極通は誓願寺の門前市が発展し、明治時代に今の様な繁華街になりました。
やがて念珠は北伝仏教と共にシルクロードを通り中国、朝鮮を経て六世紀の中頃、日本に伝えられました。その後、飛鳥、奈良、平安、鎌倉と日本仏教の発展に伴って、念珠も進化して行きます。奈良時代の南都六宗、平安時代初期の最澄の天台宗、空海の真言宗、そして鎌倉時代に法然の浄土宗、親鸞の浄土真宗、栄西の臨済宗、道元の曹洞宗、日蓮の日蓮宗等の宗派が成立し、念珠もそれぞれの宗派の教義の違いによってそれぞれに独特の形式を生み出していきました。
基本的な百八個の玉をつないだ輪は変わりませんが、そこに付く房の形状によって区別されるのです。やがて時代を経て、持ち易い様に大きな輪(百八個の玉)を半分にしたり、四分の一にしたりして、丁度掌の周りを一巻きする大きさの念珠が使用されるようになりました。これが片手念珠と呼ばれるもので、皆さんが念珠というとすぐに思い浮かべられる略式の形のものです。
今日では私共の取扱う商品の中で、この片手念珠が大きな割合を占めています。しかし、他にも歴史の中で育まれた様々な形式が現在も息づいているのです。念珠とは奥深い商品だと思います。
私共の店に入って来られると、古い木の鑑札が数多く下がっているのに気付かれると思います。 それは京都に数多くある各宗派本山の御用達であることを示す鑑札です。
私共は、政治的な首都を東京に譲った後も、宗教的な首都機能を持ち続ける京都という街で育まれて来ました。それ故に三百年という長い年月を同じ商いで生き続けてこられたのだということに、感謝しなければなりません。
我が社の企業テーマは、「手のひらから伝わる素敵なぬくもり」です。難しい事は分かりませんが、人間の宗教心の根本は、「溺れる者は藁をも掴む」という苦しさの中で何かに必死に縋ろうとする気持ちではないでしょうか。 そしてその藁が宗教なのだと思うのですが。この宗教心が現す基本的なパフォーマンスの中に、私は念珠があるのだと思います。思いを込めて縋ろうと掴んだ手のひらの中に念珠がある。そして、その思いに念珠は素敵なぬくもりを伝えて来る。そんな商品を私共が皆様に提供できたら、どんなに幸せだろうと考えています。
二十世紀は大量生産のシステムで廉価な商品を大量に社会に供給し、人々を貧しさから解放し豊かな社会を造り上げた世紀でした。しかしその反動が世紀末に数多く顕現化しました。これからの二十一世紀は二十世紀と違った意味での真の豊かさを目指して行かなければならないでしょう。
そんな二十一世紀に、私共は小さいながらも何らかの社会貢献が出来ればと願っております。
安田念珠店
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